GUIDE / 解説・比較
未払いの請求の進め方|請求書・催告・内容証明・支払督促・少額訴訟の順番
家賃や報酬が期日を過ぎても払われないときの、請求書の出し直しから催告、内容証明、支払督促、少額訴訟までの進め方と、時効の注意点を、民法・民事訴訟法と裁判所・日本郵便の案内をもとに整理しました。
家賃や取引先への請求が、期日を過ぎても払われない。そんなときに「次に何をすればよいか」を、軽い手段から順に並べました。遅れた分の金額(遅延損害金)は遅延損害金計算ツールで出せます。ここに書いたのは法律と公的機関の案内にある一般的な枠組みです。相手が争っている、金額が大きいなどの事案は、早めに弁護士・司法書士に相談してください。
全体の流れ
| 段階 | やること | ねらい |
|---|---|---|
| 1 | 請求書を出し直す・電話やメールで確認 | 単純な行き違いや失念を解く |
| 2 | 期限を決めて支払いを求める(催告) | 正式に請求した記録を残す |
| 3 | 内容証明郵便で催告する | いつ・何を送ったかを郵便局に証明してもらう |
| 4 | 支払督促 または 少額訴訟 | 裁判所の手続で支払いを求める |
必ずこの順番で進める決まりはありません。ただ、いきなり裁判所の手続に進むより、まず請求の記録を残しておくと、後の手続で「いつ請求したか」を示しやすくなります。
1. 請求書を出し直す: 内訳を書いて確かめやすくする
まずは相手の失念や行き違いを疑い、請求書を出し直すか、電話・メールで確認します。このとき、元金・利率・期間・日数を内訳として書いておくと、相手が金額を確かめやすくなります。遅延損害金計算ツールの「内訳をコピー」で、そのまま貼り付けられる文が作れます。
- いつから遅れているか: 民法412条1項で、支払いに確定した期限(例: 毎月末日)があるときは、債務者はその期限が来た時から遅滞の責任を負うとされています。期限を決めていなかったときは、請求を受けた時からです(同条3項)。
- 何%で計算するか: 民法419条1項で、金銭の支払いが遅れたときの損害賠償の額は、遅滞の責任を負った最初の時点の法定利率によるとされ、契約の利率が法定利率を超えるときは契約の利率によります。利率の選び方はツールの入力欄の下にまとめてあります。
- 同条2項で、この損害賠償は、債権者が損害の証明をする必要はないとされています。
2. 催告: 期限を決めて支払いを求める
「○月○日までに支払ってください」と期限を決めて請求するのが催告です。メールや書面のどちらでもできますが、後で「いつ請求したか」が問題になることに備えて、送った文面と日付を残しておきます。
時効との関係: 民法150条1項で、催告があったときは、その時から6か月を経過するまでの間は時効は完成しないとされています。ただし同条2項で、この猶予の間にもう一度催告しても、猶予がさらに延びることはありません。時効が近い場合は、催告だけで済ませず、次の裁判所の手続を考える必要があります。
債権の時効は、民法166条1項で、権利を行使できることを知った時から5年間、または権利を行使できる時から10年間行使しないときに消滅するとされています。古い未払いがある場合は、いつの分かを先に整理してください。
3. 内容証明郵便: 送った事実と中身を証明してもらう
日本郵便の内容証明は、いつ、どんな内容の文書を、誰から誰あてに出したかを、差出人が作った謄本によって日本郵便が証明する制度です。
- 証明されるのは文書が存在したことで、書いた内容が正しいかどうかを証明するものではありません。
- 出すには、相手に送る文書と、その謄本(写し)2通(差出人と郵便局が1通ずつ保管)、封筒を窓口に出します。どの郵便局でも出せるわけではないため、出す前に郵便局に確認します。
- 一般書留にする必要があり、配達証明を付けることもできます。インターネットで24時間受け付ける「e内容証明」もあります。
文面には、請求の根拠(契約・請求書の日付)、金額の内訳、支払期限、振込先を書きます。料金や文字数の決まりは日本郵便の案内で確認してください。
4-A. 支払督促: 書類だけで進む裁判所の手続
民事訴訟法382条で、金銭の支払いを求める請求について、裁判所書記官は債権者の申立てにより支払督促を出すことができるとされています。申立て先は、原則として相手(債務者)の住所地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官です(同法383条1項)。
- 裁判所の案内では、書類審査のみなので、訴訟のように審理のために裁判所へ行く必要はないとされています。
- 相手が支払督促を受け取ってから2週間以内に異議を出さなければ、債権者の申立てにより仮執行宣言が付き、債権者はこれに基づいて強制執行の申立てができます。
- 相手が異議を出すと、請求額に応じて地方裁判所または簡易裁判所の通常の訴訟に移ります(民事訴訟法395条)。相手が争いそうなときは、この点を見込んでおきます。
- 令和8年5月21日以降は、書面と督促手続オンラインシステムに加え、mints(民事裁判書類電子提出システム)でもオンラインで申し立てられるようになったと案内されています。
民法147条1項で、支払督促があると、その手続が終わるまで時効は完成しないとされています。
4-B. 少額訴訟: 60万円以下なら原則1回の審理
民事訴訟法368条1項で、簡易裁判所では、60万円以下の金銭の支払いを求める訴えについて、少額訴訟による審理と裁判を求めることができるとされています。
- 特別の事情がある場合を除き、最初の口頭弁論の期日で審理を終えるのが原則です(同法370条1項)。そのため、言い分と証拠は最初の期日までにすべて出します(同条2項)。契約書・請求書・催告の控え・やり取りの記録をそろえておきます。
- 裁判所のQ&Aでは、証拠は最初の期日にすぐ調べられるものに限られ、紛争の内容が複雑だったり、調べる証人が多く1回の審理で終わらないと見込まれたりする事件は、裁判所の判断で通常の手続で審理される場合があるとされています。
- 相手(被告)は、通常の手続に移すよう求めることができます(同法373条1項)。
- 判決に対しては控訴できません(同法377条)。不服があるときは、同じ簡易裁判所に異議を申し立てることになると裁判所のQ&Aで案内されています。
- 利用できる回数は、1人につき同じ裁判所で年間10回までと案内されています。
支払督促と少額訴訟、どちらを選ぶか
| 支払督促 | 少額訴訟 | |
|---|---|---|
| 金額 | 上限の定めなし | 60万円以下 |
| 裁判所へ行くか | 書類審査のみ | 期日に出頭(原則1回) |
| 相手が争うと | 異議で通常の訴訟へ | 通常の手続への移行を求められる |
| 向いている場面 | 相手が金額を争っておらず、払っていないだけ | 相手と言い分が違うが、証拠がそろっていて争点が少ない |
相手が金額や契約そのものを争っている場合は、どちらも通常の訴訟に移る可能性があります。そのときは専門家への相談を考えてください。話し合いで分割払いなどを決めたい場合は、簡易裁判所の民事調停という手続もあります。
よくある質問
Q催告を何度も繰り返せば、時効は止まり続けますか?
止まりません。民法150条2項で、催告による猶予の間にした再度の催告には、猶予の効果がないとされています。
Q遅延損害金も一緒に請求できますか?
民法419条により、金銭の支払いが遅れたときの損害賠償は利率で決まり、損害の証明はいりません。請求書や内容証明に、元金と分けて内訳を書いておくと分かりやすくなります。金額は遅延損害金計算ツールで確かめられます。
Q相手の住所が分からないときは?
民事訴訟法382条のただし書きで、支払督促は日本で公示送達によらずに送達できる場合に限られています。相手の住所が分からない場合は、手続の選び方を専門家に相談してください。
出典(2026年10月9日確認)
- 民法(e-Gov法令検索) 第147条・第150条・第166条・第412条・第419条
- 民事訴訟法(e-Gov法令検索) 第368条・第370条・第373条・第377条・第382条・第383条・第395条
- 裁判所「支払督促」
- 裁判所「簡易裁判所の民事事件Q&A」
- 日本郵便「内容証明」
この記事は一般的な情報です。個別の事案の判断は弁護士・司法書士などの専門家に、手続の詳細は申し立てる裁判所に確認してください。